
他では聞けないくすりのはなし
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今年の2月に、日本消化器学会において、胃癌の手術後に抗癌剤ののみ薬を飲んでも、飲まない場合と比べて、患者の生存率に変化がなく、効果がなかったという厚生省研究班の臨床試験の結果が出されました。
つまり、悪性腫瘍の原発巣を完全摘出したあとに、残っている可能性のある小さな癌細胞を取り除くことを目的として、抗癌剤の飲み薬を投与されるということがあります(これをadjuvant化学療法といいます)。その療法が無駄だと言うのです。
この療法は、世界中で広く認められているというものではありません。その証拠に、アメリカで治療上よく使われている本(ワシントンマニュアル)を見ると、「胃癌のadjuvant療法としての化学療法は、現在までのところ無効である」との記載があります。
しかし、日本では一般的によく行われているというのが事実です。残念ながら、今回の結果が浸透していないのです。それは、今までの慣習ということがあるのかもしれません。実際にそのような患者には、「再発防止のくすり」と説明しているようです。
今回の結果は、全ての抗癌剤が効かないということを示しているわけではありません。ただ、胃癌の手術をした後の、抗癌剤の飲み薬が効果がないということです。のんでものまなくても変わらないのであれば、医療費の負担の面からも、また副作用の面から言っても、投与しない方がいいでしょう。医療費の無駄と言われても仕方のないことです。
早いうちに、この試験を再び行い(追試して)、結果を確実なものにして、それは意味のないことだということが日本の医療の常識になってほしいものです。
今一度、医療における常識を考え直してみる必要があるのではないかと思います。
今回は、読売新聞1998年5月22日「21世紀の医療ルネサンス」、ワシントンマニュアル第7版(1997年発行)を参考にしました。
(1998/05/23)
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<補足・追加>
この話題について、ある外科の医師のお話を聞く機会がありました。その先生が言われるには、「確かに胃癌の手術後の経口抗癌剤はのんでものまなくても大差ないのかも知れない。だが、たとえ1%でも良くなる可能性があるとすれば、患者さんと話し合って、患者さんが飲みたいといえば、処方するし、そんなもの要らないという患者さんには、無理に出すことはしていない(実際にそう言われる患者さんがいるそうです)」ということでした。
その薬を出すことに対して、きちんとした形で患者さんに説明して同意を得られれば、現状として経口抗癌剤を出すことは問題なく、効くか効かないかという議論よりもむしろ、その薬を出すか出さないか、患者さんとのかかわり合いの中で決める課程の方が大事であると思った次第です。
(1998/07/02)
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制作・著作:
佐藤賛治 (薬のご質問にはお答えできません)(http://d-inf.org/drug/)